穿越者(interstellor)
【会社概要】
interstellorは、2023年1月に設立した中国スタートアップで、商業有人宇宙飛行技術サービスに特化しており、主には再利用可能な有人宇宙船の研究開発と宇宙観光の運営を一体化したサービス形態を探索している。同社は2024年11月29日、産業インターネット(工業インターネット、新サービス・新消費など)及び新素材を中心とした先端製造分野に投資するファンド管理企業「啟賦資本(QF Capital)」からエンジェルラウンドで3000万元(約6億2000万円)の資金調達に成功したことを発表した。
同社は、今回の資金調達を受け、サブオービタル有人宇宙船「穿越者壹号(CYZ1)」の脱出構造船「CYZ1-00」の量産や有人試験基地の設立、ゼロ高度脱出試験の実施の活用を進めていく。今後は、サブオービタル有人宇宙船の新しい脱出システム、新型パラシュート設計、再利用可能な構造の安定性など、乗客の安全に関わる重要なコア技術を検証する予定だ。
【プロダクト】
interstellorは「中国初の宇宙観光IP」を目指す企業で、ロケットや衛星とは異なる有人宇宙船を通じてサービスと体験を提供する。同社が研究開発した「穿越者号宇宙船(CYZ1)」は、安全かつ高精度の着陸を保証できるほか、新型パラシュートシステムを備えており、快適な大気圏旅行をもたらすことができる。この宇宙船には新型のパラシュート降下システムが設計されており、従来の有人宇宙船の着地精度を10~20kmから百メートル単位まで向上させることができる。その全体の行程は約30分になっており、米アマゾンの創始者であるジェフ・ベゾス氏が立ち上げた宇宙ビジネス企業「Blue Orogin(ブルーオリジン)」の宇宙船「New Shepard(ニューシェパード)」と比較し、着地点精度、キャビン空間、飛行時間において優位性を持つ。
interstellorが研究開発した「穿越者号宇宙船(CYZ1)」のイメージ(画像はinterstellor のニュースリリースから)
吾征AI(Wuzheng AI)
【会社概要】
吾征AIは、2019年12月に設立した中国スタートアップで、人間の生物医学的特性を認知するコンピューティング技術の開発に特化し、その技術を応用したヘルスケア管理プラットフォームの製品としている。同社は2024年12月6日、Pre-Aラウンドで数千万元の資金調達に成功したことを発表した。同社は、今回の資金調達を受け、新技術の開発、新たなマーケットの開拓、企業規模拡大後の運営、関連製品の開発、エッジ認知コンピューティング機器製品の生産を進めていく。
【プロダクト】
吾征AIが独自開発したマルチモーダル認知分析技術とそのコンピューティングプラットフォームは、主に人体のマルチモーダルな生物学的特徴(人間の体つき、身体検査の指標、過去の病歴、イメージなど)を融合した認知コンピューティング技術を応用している。これにより、病院およびオンライン診療サービスにおける疾病予防や慢性疾患管理、精密医療、スマート医療、補助診断などの多くの医療シーンを強化することができる。
同社のコンピューティングプラットフォームは立ち上げから5年を経て、100億件以上の生物医学的特徴のナレッジベースの構築に成功している。さらに、2000以上の人間の生物医学的特徴と数万種の病気の認知診断アルゴリズムテストを完了。その他、300以上の人間の体つきや生理、病理、症状などの異常信号認知コンピューティングモデルを確立しており、生物医学的特徴の正確な識別を支援。最も分かりやすいものだと、例えば、自動車のスマートコックピット内で画像識別による非接触型の心理健康診断とその診断結果に基づく健康管理アドバイスがある。
吾征AIの人間の医学生物的特徴マルチモーダル認知コンピューティングプラットフォームを基に生成された非接触検測データスマートコックピットにおいて出力された心理健康診断とその健康管理アドバイスのイメージ(画像は吾征AIのニュースリリースから)
聖点世紀(Saint Deem)
【会社概要】
聖点世紀は、2015年11月に設立した中国スタートアップで、クラウドサービス技術とビッグデータ技術に基づく手指の静脈技術を応用した検査ソリューション開発に取り組む。同社は2024年12月10日、中国の大手証券会社「国元証券(Guoyuan Securities)」からAラウンドで数千万元の資金調達に成功したことを発表した。今回の資金調達を受け、主に会社の継続的な生産能力の拡大と産業チェーンのさらなる改善を進めていく。
【プロダクト】
聖点世紀が独自開発した新世代バイオメトリクス静脈認証は、血液中のヘモグロビンが特定の波長の近赤外光と遠赤外光を吸収することを利用して静脈血管画像を形成。その画像を特定のディープラーニングモデルによって抽出・分析する。その後、保存されているサンプルと比較して、本人確認を行う。業界最大の静脈データに基づき、静脈の特徴を正確に捉えるため、計算から継続的に学習する同社の静脈認識AIアルゴリズムは、高精度かつミリ秒レベルのマルチプラットフォーム・ソリューションを提供できる。
同社のモバイル銀行向けの手のひら静脈認証ソリューションは、ユーザーの手のひら静脈の特徴を収集・検証し、ユーザー登録と情報結合を実施している。その後、銀行システムのデータベースと比較することで、迅速かつ正確な本人認証を実現。このソリューションは、銀行窓口での入力やモバイルバンキングAPPでの入力など、多数の入力方法に対応しており、様々なユーザーのニーズに応えることができる。
聖点世紀のソリューションを使用し、携帯アプリで静脈認証をするイメージ
(画像は聖点世紀のニュースリリースから)
寵爾頓(PILTON)
【会社概要】
PILTONは、2022年11月に設立した中国スタートアップで、ペットの健康管理や生活の質を向上させるためのスマートなペット用製品を提供する企業である。同社は2024年12月18日、浙江省湖州市安吉県政府主導の産業投資ファンド「安吉産業基金(Anji Industrial Fund)」や中国でハイテクイノベーション企業への投資を専門とするVC(ベンチャーキャピタル)「博匯源創投(Bohuiyuan Venture Capital)」からAラウンドで3千万元(約6億5000万円)の資金調達に成功したことを発表した。今回の資金調達を受け、同社は、さらに市場を拡大し、研究開発を深化させることで、ペット業界のスマートデバイス・スマートキャビンにおける主導権を強化。そして、企業顧客が負担するコスト削減を目的としたレンタルビジネスの導入など、販売方法の多様化を計画している。
【プロダクト】
PILTONの最大の強みは、あらゆるシーンを取り巻くペットの健康管理や生活の質の向上をカバーすることで、ペット用スマートキャビン製品に対する包括的なソリューションを提供できる点にある。日常生活、旅行、ペット病院といった緊急時などの異なるシーンに適応したペット用スマートキャビンを提供することで、ペットに快適でスマートな環境をもたらすことができる。例えば、日常生活シーンに対しては換気システム、スマート給餌(きゅうじ)機能、温湿度コントロールといった機能、旅行シーンではペットのスマートキャビンを別途用意。2024年には酸素供給口と加湿口機能を追加したほか、匂いフィルターシステムをアップグレード。同時に、同済大学と共同でAIスマートチップの研究開発を行っている。同社は、研究開発から製造、オンラインとオフラインを融合した全チャネルプロモーションに至るまでを手掛けている。
PILTONが研究開発したペット用スマートキャビンのイメージ(画像はPILTONのニュースリリースから)
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