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毎週お届け 注目中国スタートアップ企業|2024年2月号

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航天鋰電(ASPC China)

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【会社概要】

航天鋰電は2023年11月の資金調達ランキングで同列3位に立つ。20年9月に設立の中国スタートアップ企業で、大型円筒形リン酸鉄リチウム電池セル技術の研究開発、製造、そして販売を手掛ける。同社は23年11月20日にシリーズAで10億元(約203億円)の資金調達に成功した。

今回の投資には、主にスマート製造や高速通信規格「5G」などの領域に特化したPE(プライベートエクイティ=未公開株)「源起基金(ORIGIN FUND)」や、安徽省の地方政府や企業を中心にサービスを提供し、新エネルギーや省エネなどの領域で投資を行っているPE「桉樹資本(ANSHU CAPITAL)」などが参加している。

航天鋰電は今回の資金調達を受けて、大型円筒形電池セルの研究開発、製造、販売にさらに注力するとともに、大型トラックや建設機械車両といった商用車の電動化と蓄電産業の技術面および産業面でのアップグレードに力を入れる予定だ。

【プロダクト】

航天鋰電は、商用車の電動化、電力貯蔵、船舶の電動化、農業機械の電動化、ハイエンド鉛蓄電池の代替という5つの応用領域に注力している。主要製品には、蓄電タイプとEV(電気自動車)などに使われる動力タイプの2種類3規格(32800、38121、46800)の円筒形リン酸鉄リチウム電池セルがある。

航天鋰電の製品は、両面コーティング技術を採用しており、従来のコーティングと比較し、より高い材料の均一性、製品の一貫性、そしてエネルギーコストの大幅削減ができる特徴を持つ。

また、航天鋰電が研究開発する検出端末は、バッテリーパックの運行状況を常時検出し、運行データを収集して分析することができる。そして、GPRS(スマートフォンのデータ通信技術)やGPS(全地球測位システム)を通じて、バッテリーやユーザーのスマホなどから得られたデータから、位置情報、そして移動軌跡などの履歴情報を監視プラットフォームに統合し、バッテリーに関するデータをリアルタイムで監視および管理できるようにしている。

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航天鋰電が両面コーティングを実施する際に使用するコーティング材料の様子
(画像は航天鋰電のニュースリリースから)

航天鋰電は、最新のリチウムイオン電池製造技術とこれらシステムを含むスマート生産設備を採用し、生産プロセスの完全な自動化を実現した。また、生産管理においては、一貫した無理・無駄のない最適な活動を行うためのプロセス管理を徹底するリーンマネジメントを採用している。これにより、生産効率と製品品質の向上、生産コスト削減を継続的に実現し、バッテリーの年間生産能力を50ギガワット時までに拡大している。

航天鋰電の電池セルは、大型商用トラックや家庭用蓄電システム、電動二輪車などに利用されている。加えて、高地や海上、砂地、高温、そして低温といった過酷な環境や石炭基地、鉱山、港湾、製鋼所、そして採石場などのシーンにおいても応用されている。

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大型円筒形リン酸鉄電池セル「38121」の外観(画像は航天鋰電のニュースリリースから)

注目したいのは、生産能力の急速な拡大だ。航天鋰電は、様々なプロジェクトや投資を展開し、山東省、安徽省、湖北省、そして河南省にそれぞれ大型円筒形リン酸鉄リチウム電池セルおよび電池パック、電池の正極・負極材料、隔膜材などの電池素材を生産する拠点を持つ。

直近では、23年3月に、5ギガワット時の生産能力を持つ電池パック生産拠点を湖北省で建設し始めた。23年7月には、中国大型トラック大手「北奔重汽(BEIBEN TRUCK)」と連携し、内モンゴル自治区にて30ギガワット時の生産能力を持つ大型電動トラック向けEVバッテリーの生産拠点を建設し始めている。江蘇省に位置する主要生産拠点は、24年までに50ギガワット時の生産能力に達する見込みがあるという。

 

 

 

客路旅行(KLOOK)

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【会社概要】

客路旅行(KLOOK)は14年11月に設立の中国スタートアップ企業で、主に海外旅行のための予約サービスを提供する。同社は23年12月7日にシリーズE+で2億1000万ドル(約43億6800万円)の資金調達に成功した。

今回の投資には、主に企業サービスや金融などの領域に特化した米VC(ベンチャーキャピタル)「BessemerVenture Partners」や、医療健康や消費財などの領域に投資しているPE(プライベートエクイティ=未公開株)「霸菱亜洲(BPEASIA)」などが参加している。

KLOOKは今回の資金調達を受けて、製品のイノベーション、KOL(Key Opinion Leader、キー・オピニオン・リーダー)の活用およびコンテンツマーケティングの拡大、AI(人工知能)技術の統合に使用していく。

【プロダクト】

KLOOKは主に自由旅行のための予約プラットフォームを運営。旅行先へのチケットや旅行先でのアトラクション、交通(鉄道チケット/レンタカーなど)といった予約事業を含む。世界的に2300以上の目的地における50万以上の商品や活動をカバーするほか、10万件以上の旅行関連コンテンツ(旅行のためのこつ、映画、写真など)をそろえている。自社のSNSには、1000万近くのグローバルユーザーからの投稿がある。

例えば、世界的な景勝地の入場チケットや新幹線など交通機関のチケット、氷河ハイキングや東南アジアでの海へのダイビング、日本での懐石料理といった珍しい体験などを、ユーザーがKLOOKのアプリやSNSアプリ「微信(ウィーチャット)」のミニプログラム上で、簡単に予約できる。

 

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KLOOKのアプリのイメージ(画像はKLOOKのニュースリリースから)

世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の調査によれば、世界の観光産業の市場規模(GDP値)は、33年までに15兆5000億ドル(約2278兆5000億円)に成長すると予測されている。そのうち、アジア太平洋地域が最も成長が速く、23~28年の年平均成長率は11%に達する見込みだ。

この成長率は、北米と欧州の2倍近くに相当する。しかも23年は、アジア全体が新型コロナウイルス感染症の拡大から回復し始めた年であり、25年までには「大阪・関西万博」といった世界的に大規模なイベントのアジアでの開催も控えており、アジア太平洋地域の成長はまだ加速しそうだ。

KLOOKの23年の新規ユーザー数は、4年前に当たる19年の2倍以上で、リピーターは予約総量の半分以上を占めるという。同時に、23年は事業全体の黒字化を達成。売上高は19年対比で3倍となり、年間受注総額は30億ドル(約4410億円)に達している。

注目したいのは、KLOOKが、まさに東南アジアや両岸(中国・台湾)地域、日本、韓国、オーストラリアなどを含むアジア太平洋地域に焦点を当てて、事業を展開していることだ。

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KLOOKのコンテンツの一部の様子(画像はKLOOKのニュースリリースから)

KLOOKは今後、アジア太平洋地域で人口規模が急拡大しているZ世代(1990年半ばから2010年代前半生まれ)ユーザーの獲得に尽力する考え。“デジタルネーティブの新世代”といわれるZ世代旅行者は、アプリでの予約やソーシャルメディアでの情報検索に長(た)けており、ユニークな旅行スタイルや旅行先での体験に対して欲求が高い。

KLOOKは、ユーザーのニーズを満たすため、3つの面でサービスの改善やアップグレードを進めていく。1つ目の製品面では、世界中の目的地におけるサプライチェーンおよびサービスをさらに深化させていく。例えば、主要都市の新しい交通割引券を追加し、旅行者のより便利でお得な予約を実現する。

2つ目のマーケティング面では、KLOOKはコミュニティー連盟計画を通じて、KOLやコンテンツマーケティングを拡大し、リアルな視点でKLOOKの製品・サービスの流通と販売を促進していく。そして、3つ目の技術面では、AIの力でイノベーションを促進し、旅行とAI技術を統合していく。

KLOOKは2023年11月末、米グーグルのクラウドサービス「Google Cloud(グーグルクラウド)」と結んだ最新の連係を通じ、AIを活用したコンテンツの強化を開始。10種以上の言語への自動翻訳やコンテンツ生成、カスタマーチャットボットなどの導入と普及に取り組んでいる。

 

橡鷺科技(Xianglu)

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【会社概要】

橡鷺科技(Xianglu)は、21年11月に設立された中国スタートアップ企業で、ホテルのセルフサービス端末や宅配サービスロボットなどの製品を製造・販売している。同社は23年12月14日にシリーズAで数千万元(数億円)の資金調達に成功した。

今回の投資には、中国2大ネット通販大手の1つ「京東集団(JD.com)」が単独で参加している。橡鷺科技は、今回の資金調達を受けて、主に製品関連の技術開発や、生産ラインとサービス体制のアップグレード、それに新規市場の開拓などを進めていく。

【プロダクト】

橡鷺科技が自社で研究開発した「スマート炒めロボット」は、強火の炒め工程と、それに対応した中華鍋ガスの要件を満たしている。同ロボットに8700ワットの高圧電力を加えることで、26秒で300度まで素早く加熱できる。同時に、同ロボットは自社で研究開発した電圧安定化技術を搭載し、中国ではよく見られる頻繁に変動する電圧下でも、安定した加熱性能と正確な温度制御が可能だ。

加えて、同ロボットには高度に自動化された制御システムが搭載されている。このため、従来の炒めロボットとは異なり、全自動式の調味料・野菜の投入や、鍋洗浄の機能を備えている。これにより、1人の調理師が3台の機械を同時に操作できるようになり、人件費の削減につながる。さらに、調理技術を習得していない人でも、簡単なトレーニングをするだけで、1時間で60食、ファストフードなら240食を作ることができる。

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橡鷺科技のスマート炒めロボットの様子(画像は橡鷺科技のニュースリリースから)

注目したいのは、橡鷺科技は創業130年以上の歴史を持つ中国の国産ソースブランド「李錦記(Lee Kum Kee)」と連携し、中国初のスマートシェフ教育基地を設立していることだ。

橡鷺科技の担当者は、料理人公益プロジェクトのパートナー校である北京市の勁松高専と四川省成都市の財貿高専の2校を訪問した。同社は訪問に際し、100人以上の生徒向けに、スマートシェフに関する体系的なトレーニングを実施した。そのトレーニングには、最先端技術の動向からAI炒めロボットの原理、AI炒めロボットの実際の操作、そしてAIレシピ開発などまでを含む。

同時に、生徒向けに知的技能試験も設けた。この試験に合格した生徒は、橡鷺科技とケータリング企業が共同で発行するスマートシェフ認定証を取得できる。北京勁松高専の主任である任向軍(レン・シャンジュン)氏によれば、生徒たちは主に20代以後生まれの者が多いため、炒めロボットのような伝統と現代を組み合わせたツールに興味を示しやすく、かつ受け入れやすいと指摘している。

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料理人公益プロジェクトパートナー校で、橡鷺科技の炒めロボットを操作する様子
(画像は橡鷺科技のニュースリリースから)

 

 

沐秦智能(Muqin Intelligent)

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【会社概要】

沐秦智能(MuqinIntelligent)は、18年1月に設立された中国スタートアップ企業で、植栽用ドローンや植物保護用ドローンなど、農業用ドローン製品の研究開発に注力する。同社は23年12月18日にシリーズAで数千万元(数億円)の資金調達に成功した。

今回の投資には、バイオ肥料やバイオ農薬、育種、農業機械・設備など、農業のバリューチェーンに関わるテクノロジー企業に注目して投資するVC「坤辰資本(HORIZON CAPITAL)」が単独で参加している。

沐秦智能は今回の資金調達を受けて、製品の販路拡大、製品のアップグレード、IoTシステムの継続的な改善などを進めていく。

【プロダクト】

沐秦智能の最新製品は小型植物保護無人車「M200」だ。M200は、先進的なIoT技術に基づき、同社のアプリケーションを搭載することで、農業機械が人間から離れた状態でも稼働できるようにした。約60アールから約600アールの面積を備える果樹園でも、人間1人と1台のM200だけを投入し、スマートフォンでリアルタイムに監視画面を見ながら、M200を制御することができる。

また、事前にM200の経路を設計しておけば、車両に自律的に経路を進ませることもできる。さらに、沐秦智能のアプリ上で作業環境や車両運行軌跡などのデータを閲覧することで、ユーザーはリアルタイムで様々な車両の情報を把握することができる。これにより、正確な無人車の操作が可能となる。

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M200を遠隔で操作する様子(左)とスマホで操作をする様子(右)
(画像は沐秦智能の投資元である坤辰資本のニュースリリースから)

M200の車体には、筐体(きょうたい)を一体化した設計を採用。車体はコンパクト(全体の長さ164センチメートル[cm]、幅107cm、高さ115cm)で部品が露出しないため、様々な道幅に適応し、車体への切り傷や擦り傷も防ぐことができる。また、複合式の無限軌道駆動方式を採用することで、泥、斜面、溝、モモ園、ナシ園、ブドウ園など、様々な環境に適応できる。

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一体化設計が施されたM200の外観イメージ(画像は沐秦智能のホームページから)

またM200は8個の噴霧ノズルを搭載している。噴霧ノズルの噴霧角度は上下に調整が可能であるため、液体を直接葉の裏に当てて、噴霧効果を高めることができる。また、噴霧技術と空気を送るシステムのサポートによって、液体を散布できる範囲の幅は16メートル(m)から20mに達する。これによりM200は、様々な環境に適応し、均一な散布を保証することができる。
 

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M200が農薬を噴霧する様子(画像は沐秦智能の投資元である坤辰資本のニュースリリースから)

注目したいのは、沐秦智能の画期的な技術開発力だ。

M200は沐秦智能の第2世代製品で、第1世代の製品「CT200」と比べて、製造コストを少なくとも約30%削減することに成功した。同時に、ユーザーエクスペリエンスも向上している。M200は、200リットルの液体を運ぶことができ、充電時間2時間未満で、25~50エーカーの果樹園を対象に、植物保護作業を効率的に完了できる。1日平均では、100エーカー以上の面積の果樹園における作業を完了可能だ。

 

 

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