2020年4月27日(月)に中国双創ナイトをZOOMによるオンラインでのウェビナー形式で開催しました。
第16回目となる今回は、テーマを「中国Z世代のポストコロナの動向」としました。Z世代とは「1997年以降に生まれた人口層」のことを指します。今回、登壇者には、中国で活躍中の若手メンバー3名を招き、その次の消費の主役となるZ世代に対するマーケティングにも役立つような内容に焦点を当て、関連するトピックについて解説・討論していただきました。
イベント中勢揃いした登壇者たちの様子
※「中国双創ナイト」は、中国の双創(「創新(イノベーション)」と「創業(スタートアップ)」)について、情報を共有し、お互いに理解を深めることを目的としています。
以下では、匠新インターン生である齋藤慶太が、当日のイベントの様子について、報告させていただきます。
「Withコロナ時代のZ世代のコミュニケーション変化」
最初の登壇者は、あしたのチーム上海セールスマネージャーである茶圓将裕氏。
茶圓氏の情報によると、2020年3月15日から21日の期間に、世界で6200万件を超えるビジネスアプリのダウンロード数(前週比+45%、前年比+90%)があり、多くの国でZOOMがダウンロード数首位に輝いています。このように、コロナウイルスによって、人々の交流の場が、今まで主流だったオフラインからオンラインへの急速な段階的シフトを始めています。特に、Z世代という若者たちを筆頭に、ZOOM飲みだけでなく、様々なツールを利用したコミュニケーション方法の多様化が見られています。また、茶圓氏が「ZOOM飲み is Dead」と大きく取り上げたように、「HouseParty」というグループビデオチャットアプリが、ZOOMの人気を追いかける勢いで、欧米国家を中心にユーザー数をの伸ばしているようです。
茶圓氏の登壇の様子1
しかし、中国に目を向けると、ランキング首位にあるのはZOOMではなく、Tencent Meeting (騰訊会議) というアプリ。これは、300人まで無制限・無料で使用が可能であり、化粧不要の美顔機能やリアルタイム共同編集機能、さらに最近では日本語対応になりました。その便利さ・多機能性ゆえに、2019年末のサービス開始から2ヶ月弱で、DAU(Daily Active User)が1000万人を超えたそうです。そして、2020年4月17日時点でランキング上位に名を連ねるのは、ZOOM以外のアプリケーションであり、逆にZOOMは5位に止まっています。
茶圓氏の登壇の様子2
他にも、茶圓氏が独自でまとめた中国6大オフィスツールとして、TikTokを運営するByteDanceが開発したアプリLark (飛書)などが、今回のゲストかつ同社で勤務経験のある邵氏と宋氏の原体験を元に紹介されました。このようにコミュニケーションツールの競争が中国を中心に繰り広げられ、一般に普及しています。最後に、茶圓氏はZ世代のオンライン化に対する適応能力の高さを評価し、「JUST USE IT」とまとめたように、コミュニケーション手法の時勢に乗り遅れないように積極的にこれらのツールを使っていくことを推奨しました。
「有料知識コンテンツとは」
続いて登壇したのは、ワンドット株式会社のアカウントエグゼティブである邵鴻成氏。
動画や音声、文章及びライブ配信等の方法で専門知識などを提供する有料知識コンテンツ市場が、最近中国で急速に人気を集めています。邵氏の情報によれば、2021年には1兆円市場へ飛躍すると予測されているようです。その理由として、中国では、職場での競争が激しいために、専門性を必要とする有料コンテンツを購入し、勉強することで生き残ろうとするためであると、邵氏は指摘しました。また、その主な購入者たちは、80〜90年代生まれの、大都市に住む高収入層となっています。
邵氏の登壇の様子1
この有料知識コンテンツ市場では、コロナウイルスの危機を転換点に、授業の場がオンラインに移行した小学生から大学生のZ世代のユーザー数が大きく増加しており、各プラットフォームは学生向けに無料コンテンツを提供することで、より多くの支持を得ています。例えば、中国ですでにダウンロード数6億を誇る総合音声プラットフォーム「喜馬拉雅 (Ximalaya)」や、中国版クックパッドとも言えるような「下厨房(シャーチューファン)」などは代表的な有料コンテンツ提供アプリです。特に、後者の下厨房は、コロナウイルスによる外食の減少に伴う自宅での調理時間の増加により、アクティブユーザー数が550万から800万と急増加したそうです。
邵氏の登壇の様子2
このように、有料知識コンテンツは、それ自体がブランドプロモーションになると同時に、収益を上げる事業にもなることから、邵氏は、日本でもコンテンツホルダーのみならず、メーカーにとっても活用意義はあるのではないかとまとめました。
最後のQ&Aのセッションでは、数々の質問について討論が行われました。ここでは、2つ厳選して紹介します。
1つ目は、「メディア媒体として動画が主流である中で、それでも音声コンテンツが流行っている理由は何か」。
その理由として、ゲスト三者によれば、発信者にとっては、コンテンツを作成し、発信するコストが安いだけでなく、顔を出さなくて良いというプライバシーの保護の点から作成者が数多く生まれ、コンテンツが自然と充実していくから。また、視聴者の観点から考えると、音声のバックグランド再生が可能であり、視聴の場所と時間に囚われないからであると言えるでしょう。
宋氏の登壇の様子
2つ目は、「オンラインはオフラインに勝てるのか否か。」
茶圓氏によれば、中国のEコマース大手も活用する「Online Merges with Offline (OMO)」 という考え方を取り上げ、両者は代替関係にあるものではなく、共存することで補完し合うと考えるられると指摘しました。その活用事例として代表的なのが、アリババが運営する「盒馬鲜生」(フーマーフレッシュ)。オフラインとオンラインをうまく融合させることで、消費者の購買にエンターテイメント要素を組み合わせ、成功しています。
茶圓氏によるOMO解説
総じて、今回の双創ナイトでは、ポストコロナ時代に中国のZ世代を中心とした若者層の嗜好には、どのような変化が生じ、企業側から見た注目点はどこにあるのかについて、中国で活躍中の若き3名のゲストとともに、深く討論することができました。また、今回も前回 (←中国双創ナイト「コロナウイルス × EC・消費」) 同様、多くの方々に視聴及び積極的な参加をいただきました。ありがとうございました。
今回のイベントのトピックにある若者を中心とした有料知識コンテンツ市場のように、中国では生活水準の上昇につれて、要求される製品の品質や付加価値も同時に向上しています。そこで、中国企業と互角以上に戦える製品やコンテンツをもつ日系企業がたくさんあるはずです。その日系企業の中国進出成功例として、匠新CEOの田中からも紹介させていただいた通り、cottaの事例があります。これは、匠新がJETROと提供しているGAH (Global Acceleration Hub)のスタートアップ向けの中国展開支援サービスのもとで行われたものです。このサービスでは、今までの日系企業中国進出の成功と失敗の事例に基づくノウハウが蓄積されており、御社のビジネスが中国で展開可能かどうかを検証する支援を無料で提供するものです。もし日系企業で、中国での事業展開を考えているようであれば、ぜひお申し込みください。(→JETRO GAHの申込ページへ)