2020年4月8日(水)に中国双創ナイトをZoomによるオンラインでのウェビナー形式で開催しました。
第15回目となる今回は、テーマを「コロナウイルスの中国EC・消費に与える影響」としました。登壇者には、ニューリテール向けの顧客データプラットフォーム並びにスマホ上の会員向けデジタルサービスを提供・運用している游仁堂の4名の方々を招き、関連するトピックについてそれぞれ解説していただきました。
※「中国双創ナイト」は、中国の双創(「創新(イノベーション)」と「創業(スタートアップ)」)について、情報を共有し、お互いに理解を深めることを目的としています。
以下では、匠新インターン生である齋藤慶太が、当日のイベントの様子について、報告させていただきます。
イベント中の討論者の様子
「コロナウイルスが中国社会に与えた影響」
最初の登壇者は、游仁堂CEOの金田修氏。
金田氏によれば、今回のコロナウイルスとの戦いは、第二次大戦終戦80年以来の本格的な戦争であると同時に、中国はすでにその戦争に勝利した国家として人々に記憶され、長期的にその国家の強大さを印象付けることになるそうです。確かに、感染者の出現から最初の1ヶ月は初動の遅れもありましたが、その後の対応は正しかったと評価されています。その対応の中には、他の国には真似できない点が2つありました。1つは、国家に経済の成長を短期的に犠牲にする余裕があったこと。もう1つは、国家による圧倒的な情報の非対称性を独占することが国民に肯定されていることです。
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さらに注目すべきは、コロナウイルスが中国を変革を伴う大規模な社会実験の場としたということです。そこで問われたのは、オフラインとオンラインの再定義。国民は
約2ヶ月半の外出することが規制・躊躇われる異常事態の中で、ほとんどのことはオンラインでできるという前提のもとで生活できることに気づき始めています。しかし、それでもオフラインでしかできないことが2つあります。1つは、人に出会うこと。そして、もう1つは、人間は外に出ないと死んでしまうということです。
「コロナウイルスが加速したECシフト」
続いて登壇したのは、同社日本代表の青島剛史氏。
中国は、マスク、消毒剤、トイレットペッパーなど、コロナウイルスによって生まれた特殊なパニック需要にかなり迅速に対応し、それと同時に世の中の変化する需要に対して、ビジネスの切り込み方を柔軟に変化させ、生き残ろうとする環境適応性の本領を発揮したと言えます。
そして、今回の新型肺炎との戦いを気に、ビジネスにおけるオンライン化が加速していくことがほぼ確実です。その例として、主に以下の2つが挙げられます。
1つ目は、アリババが運営する中国最大のC2Cプラットフォーム「タオバオ」が、ライブストリームの実績を2桁成長させたことです。これは、顧客の自宅滞在の時間増加を考慮し、商品を販売する事業者と迅速に顧客の需要をオンラインで引き出すよう対応した結果だと言えます。
青島氏の討論の様子
2つ目は、上海ファッションウィークをオンラインで開催することにより、通常より多くの消費者に商品情報を届けることに成功したことです。
本来は大きな会場施設にて実施し、オフラインとオンラインを連動させたプロモーションを予定していました。しかし、イベントをオフラインで実施することが不可能になったことを受け、バーチャルランウェイを用意し、天猫での同時プロモーションを実施することで、大きな成功を収めることができました。
他にも、蘇寧電気がCEOも含めて肩書に関係なく全社員が販売員となり、SNSなどで個人でオンライン販売を実施したり、化粧品店が個人のカウンセリングをオンラインで行うようになったりなど、総じてビジネス全体でもオンライン化の傾向に大きな拍車がかかっています。したがって、今後中国では、オンラインチャネルの拡大および消費者購買に応じた商品構成の変更が必要になってくると予想されます。
「日本企業が直面した状況」
3番目の登壇者は、同社OMO(リテール)部門総監である栗栖裕哉氏。
コロナウイルスの影響により、先日、本格的に緊急事態宣言に踏み切った日本。その煽を受け、営業することのできない飲食店などサービス産業を主要とした日本の企業は、中国において新しい製品やサービス作りにも取り組むことができず、店舗の営業利益は
7割から8割も減少しているそうです。日系企業にもいわゆる「コロナショック」が襲来していることは明らかでしょう。
では、日本企業がオンライン対応において中国と互角に戦えるかというと、システム上、大きな困難が伴うでしょう。なぜなら、平時から自社接点の確保、そして柔軟性の高いシステム設計を準備できていないためです。今後、迅速にシステム開発の向上に取り組まない限り、コロナウイルスにより進むオンライン消費の勢いに取り残される可能性が高くなります。
栗栖氏の討論の様子
「店舗の前を通る人が売り上げを決める時代は終わった」と栗栖氏も言及された通り、人々が消費行動を行う場がネット空間へと移動しています。そこで、リテール産業を中心とする企業は、オンライントラフィックを前提としたモデルへと切り替えるべきであると同時に、企業が組み込むI Tのシステムもグランドデザインからやり直しが必要になります。
「オンラインリテール最前線」
同社SRS(コンビニ)部門運営総監である倉岡駿氏。
今回のコロナウイルスの爆発により、コンビニを中心としたリテール業界には大きな変化がありました。その例として、かつて流行った無人化店舗への再注目や自宅まで届けてくれるサービスの急成長がありました。その中でも傾向として注目すべきなのが、サイトや誘導チャネルなどの第3者を利用することで、オンライン上で間接的に自社メディア訪問者を獲得し、店舗に足を運ばせるトラフィック誘導です。同社が実際に開発し中国ローソンが導入しているオンラインプログラム上には、マスクや食事セットの予約販売、クーポン券の配布による販売促進、さらに日本IPグッズの販売などが展開されました。
倉岡氏の討論の様子
これらのサービスにおける共通点は、外出にはコロナウイルスへの感染リスクが伴う中で、不確実性や感染リスクを排除してくれるということです。コロナウイルスが蔓延している期間中は、街中の店舗やサービスの情報が不透明であり、ややもすれば国民の生活に支障をきたす死活問題になります。そこで、月間アクティブユーザーが10億人以上となっているWeChat(微信)上のグループチャットを運営し、営業・在庫情報を住民とやり取りすることでその問題を解決しました。
「車の代行はもう時代遅れ?コロナウイルスによって加速された中国代行サービス」
最後に匠新アソシエイトマネージャーである劉一櫻。
今まで代行と言えば車の運転サービスが最も普及したものでしたが、中国では、その代行サービスが新たな展開をみせています。例として、閑魚というプラットフォームを利用した「代行ゴミ捨て」や、未婚男女のために代わりにお見合いに行ってくれる「代行お見合い」などがあります。
匠新劉一櫻の討論の様子1
さらにコロナウイルスの災難を一つの転換点とし、加速された代行サービスもいくつかありました。その中には、ウイルス感染を防ぐために、代わりに墓参りをしてもらう「代行墓参り」や、留守中のペットを代わりにお世話してもらう「代行ペット飼育」、さらには食レポによって太ることを回避できると同時に満腹感を味わうこともできる「代行飲食」というものまで出現しています。
こういった中国の代行サービスは、日本にも形を変えて展開をし始めています。その一つには、配車サービスで有名なDiDiの買い物代行サービスがあり、すでに4月7日から大阪にてフードデリバリー事業を展開しています。当社の戦略として、巧みに大幅な値引き期間などを設け、他社との価格競争に打ち勝とうとしています。