回到网站

中国双創ナイト「日中医療インバウンド」

2020年8月27日(水) に中国双創ナイトをZoomによるオンラインでのウェビナー形式で開催しました。第20回目となる今回は「日中医療インバウンド」をテーマに、コロンビアクリニック(上海)で日本部医師主管の本橋京子氏と、幹細胞バンク株式会社代表取締役の中澤淳仁氏をお招きし、日中医療のこれまでとこれからについてお話を伺いました。

以下では匠新インターン生の三浦慎之介が当日のイベントについて報告させていただきます。

broken image

画像1:イベント中フリートークでの登壇者の様子

最初は本橋京子氏。同氏は日本で医師となったのち、以前から東洋哲学に関心があったことから北京に留学し医学博士課程を修了されて以来、中華文化圏で約20年間の臨床経験をお持ちです。今回は各種自然療法と東洋医学を融合させ心身の癒しについてのご自身の研究に基づき「これからの新・医療ツーリズム提言〜陽から陰へ」という内容でお話いただきました。

broken image

画像2:今、世界で起こっていること

本橋氏によると、画像2のように現代社会の情勢やテクノロジーの進歩に伴う個人の価値観の変化を踏まえた上で、これからの医療は

・中央集中から地方への分散

・医療機関、医師、サービスの多様化

が進んでいくそうです。

例えば以前は東京=優秀といったイメージが強い影響を持っていたものが、ネットの普及によって地方にいる腕の良い医師を見つけることができたり、オンライン診療などが普及することで地理的障壁が取り除かれ、個々の患者が自分の好みに合わせたものを自由に選びやすくなりつつあることが背景にあるようです。

broken image

画像3:本来的な「医」と「療」の意

そして、本橋氏は医療の「医」と「療」の漢字の成り立ちから考えると、画像3のように元々は「医」は予防を意味し、「療」は外科的な手法を含む手技によって苦痛を取り除くことであったことから、現代の解釈のように「医」にのみ偏重することなく「療」に注目し、そこから転じて「癒し」の概念の重要性を強調されていました。

それは、「癒」という字が病気を治した先にある、病気が寄り付加ない状態の意味も含むことと、実際病気が治った後も心理的な面で回復できない患者を多く診療してきた本橋氏自身の経験にも裏付けられています。

broken image

画像4:「陽」と「陰」の比較

以上を踏まえた上で、本橋氏によると、これからのツーリズムは「旅行」から「観光」へとシフトしてくそうです。本橋氏は上の表を用いて、この旅に行くこととしての「旅行」を「陽」と、自らの内面に光を見出すこととしての「観光」は「陰」と表すことができ、画像4のような「陰」の価値が重視されていくとのことでした。

続いては中澤氏。同氏は大学在学時の研究内容が評価されて中国に招かれたことがきっかけとなって21年間にわたって中国でビジネスや投資を行っており、その分野は多岐に渡りますが今回はその中でも訪日インバウンド事業と医療分野を重点的にお話いただきました。

中澤氏が経営するColoreego Limitedでは「旅マエ」、「旅ナカ」、「旅アト」の三段階に分けて施策を行っており、以下の図のようにエコサイクルを形成しています。

broken image

画像5:「旅マエ」、「旅ナカ」、「旅アト」の三段階の施策

このような施策に至ったのには画像6にあるようないくつかの失敗経験があります。

broken image

画像6:これまで試した施策とその失敗理由

これらの失敗を踏まえ、魅力的なコンテンツとおもてなしの心を備えた日本が有効な施策を打ち出すためには、中国人視点で考えることとその施策を実行可能な中国企業との連携が必要だそうです。

実際中澤氏は、中国国内で約50%のシェアを持つポケットWiFiレンタルの環球漫遊(U ROAMING)と提携して、WiFiルーターを受け渡す際や搭乗口において旅行に役立つ情報やクーポンを配布することで、上の図にあるような旅行会社との連携での失敗を防ぎ、さらにこのWiFiルーターによって行動データを利用する事も可能になっています。

broken image

画像7:中国に対応させた訪日健康診断事業の説明

続いて、中澤氏は訪日健康診断事業を挙げ、画像7にあるように中国の短いビジネス寿命と複数の競合に対抗するために、マーケットの動向を把握しながら新しいサービスを導入するなどして随時形態を変化させた事によるインバウンドの成功例も紹介くださいました。

broken image

画像8:乳菌バンキング事業の説明

最後に中澤氏は日中インバウンドの最新動向として乳菌バンキングを取り上げ、中国の富裕層を中心に自身の若い細胞を冷凍保存して将来の治療や美容施術に備える動きもあると画像8の図を用いて紹介してくださいました。

今回の双創ナイトでは「日中医療インバウンド」と題して、本橋京子氏、中澤淳二氏の2名にお越しいただきました。

本橋氏の登壇では現代人に対する医療として「癒し」が必要であり、日本の気候・風土・文化を体験してもらうインバウンドの将来的な可能性と、中澤氏の登壇ではご自身の中国でのビジネス経験に基づき、独特なコンテンツを生み出しつつもマーケットと共に変化させていくことと実際に行動を起こすことの必要性を学べました。

またQ&Aセッションを通して視聴者の方の業界を聞きながら本橋氏に登壇内容を柔軟に変更していただいたり、再生医療に関する質問に対して中澤氏の実体験や本橋氏の知見をいただいたりと、双方向のコミュニケーションを取れる時間も多く大変盛り上がりました。さらに、イベント終了後も自由に参加できるWeChatグループを通して意見交換が行われ、中には協業や連携を視野に入れたお問い合わせもあったようです。 

このように、匠新は日本の大企業と中国のスタートアップ企業双方のオープンイノベーションを推進するプラットフォームとして、日中のビジネスにおける協力の幅を広げ、両国の持続的発展のために貢献できるよう、尽力して参ります。 

今後の双創ナイトを筆頭とするイベントに関しては、オンライン開催であるがゆえに、気軽に参加することが可能です。「このブログ記事を読んで、双創ナイトに興味が出た」という方はぜひ次回ご参加ください。

日時などの詳細情報は弊社HPやFacebookにて告知するほか、匠新が配信している「中国イノベーション通信」でもお知らせいたします。 

HP:http://www.takumi.ltd/blog

Facebook:https://www.facebook.com/f.takumi.ltd 

また「中国イノベーション通信」ではイベントの告知以外にも、中国のイノベーションに関する最新ニュース、コラム、イベントなどの情報を掲載させていただいております。購読を希望される方は弊社までお問い合わせください。 

Email:info@takumi.ltd