2015年7月17日、匠新(ジャンシン)は同社創業者である田中年一により、上海の小さなオフィスで創業されました。わずか2つのデスクからスタートした匠新の名前には、「匠の精神」と「イノベーション」を融合させて新たな価値を創出するという想いが込められています。当初より掲げていたビジョンは、日中の企業をつなぎ、両国間のイノベーション連携を推進するプラットフォームとなることでした。
それから10年。匠新は日中イノベーションの最前線を走る架け橋として成長を遂げてきました。「私たちは、日中間のオープンイノベーションにいち早く取り組んできました」と田中は振り返ります。日本の製造業が持つ高度な技術力と、中国のスタートアップが生み出すスピードと活力を融合。日系企業の中国展開支援や、中国スタートアップの日本進出支援を数多くてがけてきました。
2018年:拠点展開とサービス体制の強化
2018年には東京と深圳に新たな拠点を開設。現地に根差したイノベーションのリサーチや探索、マッチング、PoC支援などに至るまで包括的なサービス体制を整備し、日中企業の協業を後押ししました。
2019年~2021年:壁を超え、協力体制を再構築
2019年、匠新の取り組みが上海市政府に高く評価され、創業者の田中年一は「上海市白玉蘭記念賞 」を受賞。この年、匠新は「ニーズ洞察→ソリューション提供→価値創出」という一貫した協力モデルを掲げ、顧客に単発的なサービスを提供するだけの立場から、長期的に顧客のWin-Win関係構築のためのパートナーとしての立場へと軸足を移してきました。

2019年、創業者の田中年一は「上海市白玉蘭記念賞 」を受賞
中国製造業の変革期において、日中企業間の連携における技術的障壁や文化的ギャップ、知的財産の扱いといった様々な壁を乗り越えるため、匠新は包括的なサポート体制を整備。特にスマート製造や新素材の分野に注力し、日中産業における新たな連携創出に貢献しました。
2020年、コロナ禍で日中往来が制限されていた状況において、オンラインウェビナー「中国双創ナイト」を開始し、日本に向けて中国の政策や市場動向を継続的に発信。
2021年6月には、上海と北京で「日中イノベーションコミュニティ」の運営をスタート。中国でイノベーションや新規事業に携わる日系企業同士の横の繋がりを構築し、中国スタートアップとの訪問交流やマッチングなどを通じて、日中イノベーション交流のためのエコシステムを構築。2022年に「リコーハッカソン」が開催され、同コミュニティのメンバーであるソニーや村田製作所、日東電工なども参画しました。

2022「リコーハッカソン」上海エリア予選現場
2022年~2024年:日中イノベーションエコシステムへの進化
2022年以降、匠新は日中共創の事例創出に注力し、日中イノベーションエコシステムの中心的な役割を担うようになりました。例えば、三井住友海上火災保険がグローバルで展開する「GDH (Global Digital Hub)」プロジェクトは、2022年に上海でスタート。匠新が安定的かつ効率的なサポートを継続的に提供し、匠新は同社にとって中国でのプロジェクト推進における重要なパートナーとなっています。また、同社は三一集団傘下でトラック事業を手がける湖南行必達網聯科技有限公司(三一重卡)および松下四维と連携し、大型EVトラックのバッテリー資産管理およびリスク管理において実用性の高いソリューションを共創。新エネルギー分野における価値創出を実現しました。
同年、上海市科学技術委員会と在上海日本国総領事館の後援のもと、「日中イノベーションデー〜日中企業イノベーション大会〜」を開催。フォーラムやピッチ、展示を通じて、日本の大手企業と中国スタートアップのマッチングを実施しました。多数の協業可能性を創出し、日中イノベーション連携の基盤を拡大しました。

「日中イノベーションデー〜日中企業イノベーション大会〜」現場
2023年9月には、上海市主催の「INNO MATCH」にてメタバース分野に注力する日中企業を招いて講演を実施し、展示エリアでは「日本企業イノベーション館」を主導。ソニー中国研究院や三井住友海上火災保険、日東電工などがイノベーティブな製品やサービスを紹介しました。

「日本企業イノベーション館」ブース
同年11月には初めて「中国国際輸入博覧会(輸入博)」に出展。日中イノベーションの成果と事例を展示し、また翌年の第7回輸入博では長年のパートナーであり日本のユニコーン企業である株式会社 TBM と共同出展しました。


2024年11月 第7回輸入博で株式会社TBMと共同出展
さらに2024年末、匠新は「上海浦東新区グローバル人材誘致パートナー」に認定され、地域のイノベーションにおける人材交流促進の役割を担いました。
同年、日中のデジタルやAI領域における連携を本格化すべく、「匠数新(Takumi Digital)」を設立。田中は「日本の社会課題の解決やDX推進において、日本は中国の技術を積極的に活用すべきだ」と述べています。
未来への展望:次の10年に向けて
10周年を迎えた匠新は、これまでの事業活動の中で培ってきた知見を体制化し、今後の発展に活かしていきます。日中の産業連携は、単なる貿易や製造といった一方向の関係から、共創やエコシステムの構築という新たなフェーズへと進化しています。
これからの10年、匠新はAI、ロボティクス、新エネルギー車(NEV)、カーボンニュートラルといった中国が強みを持つ分野に注力し、より多くの日中間での共創機会を創出していきます。今後も私たちは、国境を越えた新しい協業を実現する「日中イノベーションの架け橋」として、日中間における産業の未来を切り拓いてまいります。