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毎週お届け 注目中国スタートアップ企業|2023年10月号

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中科富海(Fullcryo)

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【会社概要】

中科富海(Fullcryo)は、16年8月設立の中国スタートアップ企業で、大型低温冷凍装置の設計・製造および低温システムエンジニアリング&工業ガスを提供している。同社は23年8月3日にシリーズCで8億元(約165億6000万円)の資金調達に成功し、推定企業評価値額70億元(約1449億円)のユニコーン企業となっている。

今回の投資には、中国国務院が批准し、設立した国家レベルのPEファンド「国家混改基金(CCT)」、中国国有銀行大手「中国工商銀行(ICBC)」傘下のアセットマネジメント企業「工銀国際(ICBCInternational)」、エンジェル投資に特化した国有系ハードテック投資インキュベーションプラットフォーム「中科創星(CASSTAR)」などが参加している。

 

【プロダクト】

中科富海は今回の資金調達を受けて、主に関連設備の製造とガス生産規模およびその能力の向上、技術開発、水素エネルギー、電子材料ガス(半導体や液晶、太陽電池など様々なエレクトロニクス製品を製造する際に使用する特殊な高純度ガス)およびグリーンガス業務の力を入れ、その再配置を進めていく。

中科富海は、中国科学院理化技术研究所が数十年にわたり蓄積してきた大型低温工学技術をベースに、20-2K(K=ケルビン、約-271℃~約-253℃に相当)の冷凍液化分離装置のコア技術を自社開発している。同社は設立以来、液体水素、液体ヘリウムの大型低温冷凍装置、水素とヘリウムの液化装置、液体水素・液体ヘリウムの低温液体貯蔵運搬装置、希ガス(ネオン、ヘリウム、クリプトン、キセノン)と工業ガスの分離精製装置、電子特殊ガス製造装置といった、先進低温装置と水素エネルギーを応用したシステムなどのソリューションを提供してきた。

これにより、中国の大型低温装置と戦略的重要性を持つガス資源に関する地理学的制約(中国に低温装置を製造できるメーカーが少なく、加えてガス資源も少ないこと)を解決する。このため、中科富海は中国の科学研究や航空宇宙産業、そして半導体などのハイテク産業の自律的発展を支えているともいえる。

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中科富海の超低温科技園(超低温テクノロジーパーク)の様子

(画像は中科富海のニュースリリースから)

注目したいのは、中科富海の電子特殊ガス事業部が、ヘリウムビジネスの充実化を図るため、ヘリウム資源ビジネスセンターを設立し、中国のヘリウム資源開発・供給とその産業への応用に注力し始めていることだ。同事業部は、2021年から2年間、業務を遂行し、ヘリウムの安定供給能力を着実に向上させている。LNG(天然ガス)およびBOG(ボイルオフガス、-160℃のLNGを貯蔵しているタンク内で外部入熱により蒸発して発生するガス)からのヘリウム回収技術を活用し、中国国内のBOGヘリウム工場の生産能力を拡大している。

その一方で、自社のコア技術とネットワークを活用し、国際市場に進出。ヘリウム資源を大規模に確保すると同時に、中国国内製造の液体ヘリウムの輸入を国外に対しても推進することで、海外企業の同業界における独占状況を打破している。こうして、自社による液体ヘリウムの生産と海外協業の多角化戦略を展開し、中国のヘリウム資源の確保と安定供給体制を構築する役割も担っている。

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中科富海のガス輸送車の様子(左)とガス資源の運営拠点の分布図(右)

(画像は中科富海のニュースリリースから)

 

中科富海が提供する高純度ヘリウムガスは、航空宇宙、医療、エレクトロニクス、半導体、光ファイバー製造などの高度な分野で広く利用され、業界内外から高く評価されている。近年は、国内外のヘリウム回収プロジェクトに参画し、ロシア、中東、北アフリカなどのヘリウム資源地とも連携。中国国内でも四川省成都市や天津市などに気体液化拠点を設置し、各地域の液体ヘリウムやガスに対するニーズに応えている。

 

 

霖和気候科技(co2loop)

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【会社概要】

霖和気候科技(co2loop)は、21年4月設立の中国スタートアップ企業で、分散式CCUS(回収・貯留した二酸化炭素を有効利用すること)技術のカーボンニュートラル総合ソリューションを提供している。同社は23年8月3日にシリーズPre-Aで数千万元(数億円)の資金調達に成功した。

今回の投資には、中国総合証券企業「中信建投証券(CHINASECURITIES)」傘下の投資および資産管理企業「中信建投資本(CHINA CAPITALMANAGEMENT)」と、新素材領域に特化した投資管理企業「新材智資本(AMT CAPITAL)」が参加している。霖和気候科技は今回の資金調達を受けて、重要分野の製品開発の推進とモデルプロジェクトの開発を拡大するほか、人員拡大や市場開拓などを加速していく。

 

【プロダクト】

霖和気候科技は、再現可能かつ標準化された分散式回収および利用技術ソリューションの開発に注力している。同社CEO(最高経営責任者)の周馥(ジョウ・フー)氏によれば、現在の二酸化炭素回収と利用の間にはミスマッチが存在しているという。CCUSの大規模実装を阻害する主な要因は、まさにこの回収と利用のシーンを効果的に結合できないことにあると話す。

この課題を解決するため、霖和気候科技は、分散式回収と多様な利用シーンを組み合わせた「以U定C(利用に合わせた回収)」という概念を提唱する。同じく周馥氏は、二酸化炭素の回収、利用、そして貯蔵のうち、利用のみが市場を通じた経済効果を生むと指摘している。ゆえに、利用シナリオにおけるニーズの特性に合わせて回収技術を柔軟に選択することで、初めて合理的かつ再現可能なCCUSの大規模実装が可能になる。つまり、利用がより実際のニーズに適合した形式である分散式となる場合、回収の方法も分散式である必要があるわけだ。

そこで、実際の利用ニーズに合わせて二酸化炭素の回収工程とビジネスモデルを設計し、「その場で回収し、その場で利用」を実現した。こうして、二酸化炭素を役に立たない廃棄物から、回収した二酸化炭素と各種原材料を結合させる製造プロセスを通じて、温室などで使われる気体肥料や建設現場で使われるコンクリート材料、そしてれんがなどの資源へとより有効に転換することを目指す。
 

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霖和気候科技のDAC(直接空気回収)システムの現場

(画像は霖和気候科技のニュースリリースから)

 

注目したいのは、霖和気候科技が自社開発した2つの分散式二酸化炭素回収技術だ。

1つは、MSCCM(湿度変化カーボンキャプチャー材料)を用いた乾湿式DAC(直接空気回収)技術だ。霖和気候科技は自社開発のナノ材料を用いてアジア初の工業化DACシステムの構築に成功している。この技術は、湿度の変化のみで二酸化炭素の吸着と脱離が可能なMSCCM材料を世界で初めて採用した。その他、異なる濃度の二酸化炭素を出力でき、空気の自然特性を最大限活用した回収方法となっている。このため、分散式で低コストかつ必要に応じた回収が可能であり、従来型のDACが抱えていた熱力学における限界を突破した、より経済的かつ効率の高いDACの一つとなっている。

もう1つは、中国国内における適用シーンが広範にわたる、くさび式(固定式)排ガス回収技術だ。霖和気候科技の小型くさび式排ガス吸着システム設備は、構造がコンパクトで運送にも便利だ。従って、空間的制約が高い小規模排出源に適しており、例えば、陸上油田や海上施設、船舶などでの二酸化炭素回収を可能にする。同技術は、従来型のDACと比較して、その吸収効率は85~95%に達し、設備としての設置体積も30~90%低減できる。さらに、その運転コストとエネルギー消費も10%低減できるとされている。この効果は、既に同社の顧客によって検証済みだ。

 

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霖和気候科技のくさび式(固定式)排ガス回収技術を搭載した分散式排ガス回収システム

(画像は霖和気候科技のニュースリリースから)

 

 

傲鯊智能(ULS Robotics)

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【会社概要】

傲鯊智能(ULS Robotics)は、18年4月に設立された中国スタートアップ企業で、外骨格ロボットの研究開発に注力している。同社は23年8月8日にシリーズA(金額は、未公開)の資金調達に成功した。

今回の投資には、製造、新世代情報技術、新エネルギーおよびグリーン経済に焦点を当てて投資を行うPEファンド「国儀資本(GUOYI CAPITAL)」が単独で参加している。傲鯊智能は資金調達を受けて、外骨格ロボットのコア技術に対する研究開発投資を増加させ、コア製品のアップグレードと新製品の研究開発を加速させていく。同時に、自社の組織構造の改善と製品マーケティングの促進にも力を入れていく。

 

【プロダクト】

傲鯊智能は、工業、医療、教育分野の外骨格ロボット製品の研究開発、製造、ソリューションの提供に注力している。同社のコアチームは、外骨格ロボットの研究開発を世界でも比較的早期から手掛けており、ロボット制御システムや動作制御アルゴリズム、マルチセンサーが収集するデータの融合、ヒューマン・マシン・インタラクション、そしてマシンビジョンといった分野において、豊富な設計開発経験を有している。

傲鯊智能の外骨格ロボット製品は、上肢、腰、下肢、全身などをカバーし、品質管理に関する国際規格「ISO9001」や欧州連合(EU)の安全規格「CEマーク」を取得済みだ。

傲鯊智能の製品は現在までに、自動車や航空、電力、鉱山などの業界、そして大学をはじめとする高等教育機関などにおいて導入実績を持つ。主な顧客にはフォルクスワーゲンの中国合弁会社「一汽大衆(一汽VW)」、トヨタ自動車の中国合弁会社「広汽豊田(広汽トヨタ)」、中国国有電力大手の国家電網(STATE GRID)、北京大興国際空港、そしてEVバッテリー大手の寧徳時代(CATL)などの著名企業がいる。

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傲鯊智能がつくる外骨格ロボット製品を実際に応用したシーンの様子
左上から右下の順、自動車、電子機器、化学繊維、航空物流、鉱山、電力、応急救援、建築の応用シーンとなっている
(画像は傲鯊智能のニュースリリースから)

 

直近では、2023年に公開された中国で人気のSF映画「流浪地球2(The Wandering Earth 2)」の撮影で、出演キャストが傲鯊智能の外骨格ロボットを装着して登場した。同社は同映画での外骨格ロボットの連携パートナーとして名を連ねたことで、急速に脚光を浴びている。

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「流浪地球2(The Wandering Earth 2)」の中でキャストが傲鯊智能の外骨格ロボットを装着し、撮影を行う様子
(画像は流浪地球のニュースリリースから)

 

注目したいのは、19年から毎年更新を経てアップグレードされた第4世代外骨格ロボットの製品ラインアップだ。

1つ目の腰部外骨格ロボット「BES-HV」は、上肢外骨格と同じ動力バッテリーモジュール設計で、稼働時間は5~8時間、最大30キログラムの助力を提供できる。重量物の搬送時に人体のアシストと保護を提供し、腰の負傷リスクを低減する一方で、作業効率も向上させる。この製品は、物流、鉱山、空港の搬送現場などで既に大規模な導入が見られている。

2つ目の全身外骨格ロボット「BES-Ultra」は、傲鯊智能が自主開発した最新鋭のデジタルドライバーを搭載。これにより、一体型モジュール減速システムと自律適応スマート動作制御システムを実現。加えて、同社独自のソフトウエアインピーダンス、自己学習アダプティブ歩行モード、そしてAI(人工知能)を基盤とした動作制御アルゴリズムとパターン認識を統合している。

そして3つ目の上肢外骨格ロボット「MAPS-E」は、人の上肢に対して最大20キログラムの助力を提供でき、自動車、建設、電力設備のメンテナンスなどの現場において、利用できる。上肢外骨格の動力バッテリーモジュールは取り外し可能な設計となっており、使用中にスピーディーにバッテリーを交換できるため、5~8時間の持続稼働時間を実現できる。

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傲鯊智能の第4世代外骨格ロボット製品ラインアップ
左から、腰部外骨格ロボット「BES-HV」、全身外骨格ロボット「BES-Ultra」、上肢外骨格ロボット「MAPS-E」
(画像は傲鯊智能のニュースリリースから)

 

 

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