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中国双創ナイト「破壊的イノベーション」

2020年10月27日(水) に中国双創ナイトをzoomによるオンラインでのウェビナー形式で開催しました。第22回目となる今回は「破壊的イノベーション」をテーマに、関西学院大学経営戦略研究科長の玉田俊平太氏にご登壇頂きました。冒頭ではジャンシンアナリストの朱からジャンシンのサービスについてのご説明、そして玉田氏の講演に次いで、日中共創の実際の事例や課題についてジャンシンCEOの田中が紹介いたしました。以下ではインターン生の三浦慎之介が当日のイベントについて報告させて頂きます。

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【画像1】中国スタートアップ企業ソーシングについて

・中国イノベーションアドバイザリーサービス

ジャンシンでは中国のスタートアップ、投資情報、業界トレンドのリサーチを実施し顧客のイノベーションを支援するサービスを提供しています。今回は実際のサービスのイメージを持っていただく為に、朱からスタートアップ 1社をご紹介させていただきました。実際のリサーチ業務を実施する際と同じように、中国語で記されているホームページを朱の方で分かりやすく解説しながら、主要なプロダクトやサービスを挙げながら説明をいたしました。紹介する企業はどれも最新の技術やサービスを持っていますが、競争の激しい中国市場では似たソリューションを提供する企業も多いのが現状です。したがって、毎回その企業の競合他社と差別化された強みも含めて説明を差し上げております。

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【画像2】左からジャンシン(匠新)CEO田中、劉、朱

今回は例として睡眠に関するソリューションを提供する企業をご紹介しましたが、実際は19の大分類、200近い小分類から関心のある分野をご指定いただき、ご要望を伺ってコミュニケーションを取りながらロングリストからショートリストに絞り込み、日系企業の中国におけるオープン・イノベーションをサポートしております。この他、スタートアップ企業以外にも中国の業界やイノベーションのトレンドについてもリサーチサービスを提供しております。ご興味のある方は下記のメールアドレスや、イベントのWeChatグループ経由でご気軽に連絡いただければ幸いです。

・破壊的イノベーションとはどのようなものか

冒頭でサービスの紹介をさせていただいたあとは、関西学院大学経営戦略研究科研究科長の玉田俊平太先生にご登壇いただきました。破壊的イノベーションは1997年頃にアメリカで提唱され、2000年に日本に入ってきた概念です。しかし、この理論は依然として有効かつ強力であり、経営者が未来を予測できるかどうかを左右するものとのことです。

まず、破壊的イノベーションを理解するために“イノベーション“について説明してくださいました。“イノベーション“とは「何かを新しくすること」を語源に持ち、

・イノベーション研究のための国際標準では「新しいロダクト/サービスを市場に出すこと」や「新しいビジネスプロセスを社内に導入すること」と定義されている

・そして、イノベーションを生み出そうとする活動は「イノベーション活動」と呼ばれ、著名なイノベーションの研究者であるパビットはイノベーション活動を「機会を新しいアイデアへと転換し、それが広く使われるようにする過程」であると述べている

これらを踏まえた上で、玉田先生はイノベーションを「創新普及」と訳すべきではないかと提唱されていました。ただ新しいものを生み出すだけでなくそれが顧客に受け入れられ普及することで経済的な成功が得られるからです。

・何故、歴史ある大企業が破壊的イノベーションに破壊されてしまうのか

歴史ある大企業は技術の蓄積、製造能力、販売網、サービス網、既存顧客路の信頼関係、それらに伴うブランド力を持っているにもかかわらず、これまでハードディスクドライブ産業や鉄鋼業では多くの既存企業が新規参入企業に淘汰されてきました。こういった現象についてビジネス誌などでは「企業は経営判断を誤ったから競争に負けたのだ」と説明される場合が多いが、玉田先生の師であるクリステンセンは経営判断が悪いからだと断定するのは早計だと考えました。

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【画像3】コンピュータ業界における破壊的イノベーションのケース

例えば、上の画像にある例ではメインフレーム事業を行っていたIBMはミニコンピュータでDECに打ち負かされていますが、その下の行では、デスクトップ・パソコンによってIBMがミニコンピュータのDECを打ち負かしています。もしIBMを打ち負かしたDECの経営がIBMより優れているのであれば、このようなことにはならないでしょう。なので、ここでは経営優劣では説明のできない現象が起きており、新たな理論として「破壊的イノベーション」の概念が生まれたそうです。

では、破壊的イノベーションとはどのようなものなのでしょうか。玉田先生はクリステンセンの定義した以下の2種類のイノベーションについて述べました。

持続的イノベーション…従来製品よりも優れた性能で、要求の厳しいハイエンドの顧客獲得を狙うもので、その中には漸進的なものや画期的なものもある。

破壊的イノベーション…既存の主要顧客には性能が低すぎて魅力的に映らないが、①新しい顧客や、②それほど要求が厳しくない顧客にアピールする、シンプルで使い勝手が良く安上がりな製品をもたらす。

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【画像4】イノベーションの分類

玉田先生によると、クリステンセンは、歴史的大企業は競争の感覚に長け、顧客の意見に注意深く耳を傾け、新技術に積極的に投資することで前者の持続的イノベーションには長けているものの、後者の破壊的イノベーションにはうまく対処できずに打ち負かされてしまうようで、この現象を「イノベーターのジレンマ」と名付けています。

この「イノベーターのジレンマ」が避けられない理由は優良企業の合理的経営判断、具体的には上位市場には上がれるが下位市場には降りられないという「非対称的なモチベーション」によって、低価格で最低限の品質を備えた破壊的イノベーターが下位市場に新規参入してきた場合に、優良企業は利益率の低い下位市場を切り、上位市場にシフトし続けることになってしまうからだそうです。

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【画像5】非対称的なイノベーションの説明

そして、破壊的イノベーターが技術力を徐々に身につけ、上位市場に進出していくことで、最終的には優良な歴史ある大企業が打ち負かされることになってしまうそうです。この時、優良企業が不採算市場から撤退する経営判断について、玉田先生は何一つ間違えたものはなく、ビジネススクールであれば満点を取れるものだと仰っていました。

実際、デジタルカメラ市場では破壊的イノベーションが起こっており、ハイエンドの一眼レフカメラで高いシェアを握っていたニコンは、小型軽量で高画質の写真を撮れるミラーレスカメラの参入に出遅れたことや、今度のiPhone12に代表されるようにプロが使うカメラとも遜色のない水準のカメラを搭載するスマートフォンが台頭してきたことで、過去6年の間で映像機器部門での売上が約3500億円も減少する事態となっているそうです。

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【画像6】デジタルカメラにおける破壊的イノベーション

・破壊的イノベーションを起こすためにはどのようなマネジメントが求められるか

短期的には主要顧客が重視する性能を引き下げる効果を持つ「破壊的イノベーション」はどのような産業でも起こっており、大手優良企業が「破壊的イノベーション」を起こすためにはどのようにすれば良いのでしょうか。この問いに答えるために、玉田先生はまず企業活動に関わる「知の探索」と「知の深堀り」の2つの概念を挙げています。前者は自社の既存の認知の範囲を超えて遠くに認知を拡げていく行為であり、新しいアイデアに繋がりやすいが不確実性が高くコストがかかるものです。後者は探索などを通じて試したことの中から、成功しそうなものを見極め、それを深掘りし磨き込んでいく活動です。玉田先生によると、この二つが高次元でバランスが取れている「両利きの経営」の必要があるとのことでした。

しかし、企業活動はともすると社会的な信頼を確保できる「知の深堀り」の方に向かいやすく、特に大手優良企業であれば既に成功体験があるので、一度「自分たちのやっている事は正しい」と認識すると、自分の認知に疑念を持つ行為でもある「知の探索」を行うことができず、そこから抜け出すことができない「サクセス・トラップ」に足を取られてしまうようです。

そのような状況に陥らないためにも、以下のような具体的な7つのステップに落とし込んで行動することが大切だと玉田先生は仰っていました。

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【画像7】破壊的(ディスラプティブ)イノベーションを起こす7つのステップ

 なので、日本企業が破壊的イノベーションを実現するためには、中国企業のスピードとパワーを活かして協業することが非常に有効だと仰っていました。

・日中共創について

まず、中国はデジタル分野でのイノベーションに強みを持っており、前回Venture with Japanのイベントの冒頭でもお話した通り、中国政府が「新インフラ」政策を推進しており、その重要な構成要素の中でも特に「新エネルギー」「工業ロボット」「半導体関連」は日本企業が強みを持っており中国での大きなチャンスになるとのことでした。実際トヨタやパナソニックが中国に新エネルギー関連の合弁会社を作っていることを例に挙げました。競争機会や留意点についてまとめると以下のようになります。

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【画像8】アフターコロナにおける中国と日本における共創機会

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【画像9】日中共創を進めるに当たっての留意点

ジャンシンでは、これらのリスクを適切に把握、調整しながら確実に機会を活かして、日中間でのイノベーション、破壊的イノベーションを起こすためのサポートを提供しております。

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【画像10】Q&Aセッションでの登壇者の様子

今回のイベントでは玉田俊平太先生に登壇いただき、破壊的イノベーションについて詳細にご解説いただきました。実際のビジネススクールで扱う内容もあり濃密な内容でしたが、あっという間に時間が過ぎてしまいました。実際、講演終了後のQ&Aセッションではいつもより多くの質問が寄せられ、大盛況に終わることができました。

ジャンシンは今後も、毎月開催している「双創ナイト」をはじめとする各種イベントはZoom等を用いてオンライン開催にする予定です。参加も無料で、他では聞けない中国の最新動向から、ビジネスにつながるイベントまで、豊富なコンテンツをご用意いたしますのでどうぞ気軽にご参加ください。

日時などの詳細情報は弊社HPやFacebookにて告知するほか、ジャンシンが配信している「中国イノベーション通信」でもお知らせいたします。

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また「中国イノベーション通信」ではイベントの告知以外にも、中国のイノベーションに関する最新ニュース、コラム、イベントなどの情報を掲載させていただいております。購読を希望される方は弊社までお問い合わせください。

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